エリザベスの友達 村田喜代子
- 2019.11.01 Friday
- 07:20
JUGEMテーマ:読書
施設で暮らす認知症の母・初音の記憶は、かつて満州国建国の後、煌びやかだった天津租界で結婚生活を送っていた頃に戻っていた。
イングリッシュネームを持ち、清朝最後の皇帝・溥儀と妻・婉容の話を身近に聞き、そして引き上げ船で命からがら日本へ戻ってきた過去。
初音にとってその出来事はまさに今、目の前で繰り広げられているかのように鮮明だ。
彼女が暮らす介護センターでは、初音と同じように戦中の記憶の中に生きる人々がたくさんいる。
兄弟のように育った馬たちと再会した土倉。郵便配達婦をしながら8人の子供を育てた宇美。
戦中戦後の日本を生きてきた高齢者たちの想いが今あふれ出す。。。。
残念ながらちょっと入りにくい作品でした。
認知症の人の想いや記憶は曖昧さがあったり、霧がかかったようではっきりとした感情ではないからです。
でもそれがかえってリアリティなのかな? という気はしました。
戦争の悲惨な場面の描写はありません。
けれど、見送った馬の名前を叫んだり、歌で記憶が呼び起こされた男性が許してくれと謝罪するシーンなどは、想像するしかないだけに余計に胸が痛くなります。
日本中でもっとたくさんの人が痛い思い苦しい思い辛い思いをしたんだろうなということを想像すると、認知症になって忘れられるものならば忘れて幸せな気持ちだけをもっていってくれたらいいなと思いました。