ロバータさあ歩きましょう   佐々木 たづ

  • 2020.04.06 Monday
  • 09:00

JUGEMテーマ:読書

 

 

未来は希望に満ちていた。
受験は目の前。今ならば何にでもなれる。
試験勉強にも身を入れて、 自分の未来を切り開くのだ。

 

時折、物が二重に見えたり目の前にもやがかかったりしていたが、それは左に出来たモノモライのせい。
すぐに治るだろう。そう思っていた。
だが、右目を手で覆った瞬間、世界は全て靄の中へと消えてしまった。

 

不安を抱えながら眼医者にかかるたづ。
だがどんな治療も彼女の視力を取り戻すことが出来なかった。

ある日を境に世界が変わった。
自分は暗闇の中で生きなければならないのだと、覚悟を決めなければならなかった。

そんなたづの元に届いた一つの希望。
それが盲導犬のロバータだった。


彼女がロバータと出会えたのはとても運が良かったと思います。
父親が仕事を通じて外国人の知人がいて、アメリカに行く資金もあり、御自身も英語も勉強していたのですから。

 

もちろん、彼女が努力家だったことがこれらの幸運を生かす土壌にあったことが最大の武器でした。
彼女はとても思慮深いし、我慢強くて根気があります。
決めたらやりとおす意思の強さ。
周囲に対する心遣い。

視力を失い、その失意のまま自暴自棄にならなかった強さはとても素晴らしく羨ましい。


ロバータとの訓練や、その後の彼女の生き方を読むと、ほんとうに敬服することばかりです。

ロバータに対する家族の深い愛情にも心を打たれます。


私はこの本で盲導犬というものを知りました。
愛玩ではない犬。
ただ可愛がられるのを待つのではなく、崇高な使命を持ってそれを全うしようとする姿には心を打たれます。

人と犬。
種を超えた絆は、きっとそれを経験した人でなければ分からない、深くて暖かくて宝石のように輝いて、人生の最期まで付き添ってくれる宝物なのだと確信しました。

子供の愛し方がわからない親たち    斎藤 学

  • 2020.04.06 Monday
  • 08:57

JUGEMテーマ:読書

 

 

子育ては大変です。
人間を育てるには、自分が人としてどうあるべきかを知り、自分の中に確固たる『親像』を持っていなければ、育て方がブレてしまいます。


けれど、自分というものをよく理解し、親として成熟している人はいません。
なぜなら、人は子供を産んでから初めて親になるからです。

虐待されて育った子供が必ず自分の子供を虐待する、ということもないし、愛されて育ったハズなのに子供に辛く当ってしまい、理想の親に慣れない自分に失望している人もいる。


今、いじめや育児放棄、安易な性交渉での堕胎や、幼すぎる親という問題が多くクローズアップされています。

逆に、親を愛せない子供もいます。
この本には、とても現実とは思えないような虐待の真実が出てきます。


『自分はそんなことしないから』と思わないで、誰もが陥るかもしれない罠はそこらじゅうに満ちていると思って、世の中の親御さんたちに読んで欲しいなと思います。


虐待の問題で本当に助けなければならないのは、親の方だと思うからです。

愛したいのに愛し方がわからない。
自分の愛が本当に子供に伝わっているのか分からない。
親の不安はきっとたぶん皆おなじ。
虐待の見つけ方や、対処の仕方などの勉強にもなりますので、親でない人にもオススメです。

 

ザ・ロード   コーマック・マッカーシー

  • 2020.04.06 Monday
  • 08:54

JUGEMテーマ:読書

 

 

世界は崩壊した。
生き残った父子は、暖かな地方を目指し、南へと旅を続ける。
食べるものにも事欠く冷たい灰色の世界。
理性や秩序を失った人々。
いつか来る『死』に怯えながら、それでも前へと歩き続ける。

 

ピュリッツァー賞受賞作

 

とても暗くて寂しくて陰鬱な景色の描写と、獣のように他の生物に怯えながら生きる糧を探す父子。
読んでいると、こんな世界で生き残るよりも、早めに命を絶った方が楽なんじゃないかと思われます。


唯一の救いは、少年がまだ希望を持っているということ。
絶望と隣合わせではありますが、ないよりまし。
そして、少年と同じように、まだ人間であるという誇りを失っていない人々もいるかもしれないということ。
出来れば、とても健康で元気な時に読まれることをお勧めします。

 

失業パラダイス  碧野 圭

  • 2020.04.06 Monday
  • 08:50

JUGEMテーマ:読書

 

 

政治に関するコメントを一般人からとるというパラエティー番組。
内容が重いだけに、テレビ的に面白いものはとれない。
時間もないということで、ADの敦が女装してコメントすることに・・・。
ところがこれがネットに流れ、やらせ騒動に発展。
末端の切り捨てと言う形で番組制作会社をクビになってしまった敦と、一緒に失職したディレクター・岡本は、仕方なく同居することになった。

 

どちらかと言えば草食系の敦。
別の道に進むか、それとも今までの慣れた仕事で次を見つけるか、モンモンと悩んでいたが、脳天気なのは岡本で、彼は一向に失業を気にした風もない。
どころか、ペット撮影など一般人相手の映像制作会社を遊び気分で立ち上げてしまう始末。


半ば無理やりに手伝わされることになった敦。
初めは小さなプライドが邪魔をして仕事に異議を見出せずにいたが、現れた天使の歌声を持つ引きこもりの少女・沙良のオーデション用プロモを作成するうち、熱意が芽生え・・・。

 

思いもよらないことで、何の前触れもなく人生の選択を迫られたり、それまでの生活がガラリと変わってしまうことがある。
それが人生だよと、ハプニングすらも楽しんでしまえる岡本の貪欲さというか大らかさが私には羨ましい。


そして、流されるように生きてきた敦にも、心の底にある今までの仕事や夢に対する希望や情熱が失われていないことに、エールを送りたくなる。

 

一時期、落ち込んだり駄目になったり全てが無意味だと思える時があっても、小さなきっかけで世界は変わる。
人生って、世界って、悪い方にも良い方にも、変わる時は突然で些細なことで、そしてそのことにほとんど意味なんてない。
要は、変わることなく続くと思われていた毎日が変わった時、そこからどう動くかで、また世界が変わる。

 

引きこもりだった少女が外にでるきっかけ。
職業の岐路で悩んでいた敦が本当にやりたいことは何なのかを見つけたきっかけ。
それは、どんな形でもいいから世の中と接点を絶たないってことなんだと思った。

 

誰かの一言で。
誰かの手で。
誰かの存在で。
自分の世界は動いてる。

 

御不浄バトル  羽田 圭介

  • 2020.04.06 Monday
  • 08:48

JUGEMテーマ:読書

 

 

苛酷な労働と精神的負担で半年も持たない悪徳業者に勤めてしまった僕。
唯一の憩いの場は御不浄。

朝の通勤時には、改札口から少し離れたお気に入りのトイレで用をたし、トイレの常連メンバー達との争奪戦や彼らの素性に想像力を働かせ、会社では窓のあるトイレでお気に入りの芳香剤を持ち込んでの昼食。
無難に事務職を続けた結果、2年の歳月が過ぎたが、このままいいのかと疑問を抱いていた矢先、一本の電話で退職に向けての計画が動き出すことに。
ブラックな会社に勤めてしまった彼は無事に『会社都合』で退職することが出来るのか!?


名前に惹かれて読んでみたのですが、御不浄で壮絶なバトルが繰り広げられることはありません。
ただ、彼にとってトイレとは唯一の憩いの場であり、日常を取り戻し、ストレスを発散させることのできる大切な場所であるというだけのこと。


だから、『ブラック会社に勤めているんだが僕はもう限界かもしれない』というブラックユーモアな作品と同等のものかと思ってたので残念感がぬぐえませんでした。
トイレでほっとするのは理解できますが、あそこまでトイレという空間を自分の日常に取り込むのは共感できなかったなー。という作品。

 

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